セレブロ認知症ラボ

~ 認知症は予防できる?ー研究者が語る認知症 ~

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論文解説

Mamaki、ハワイ原産ハーブ「Mamaki」の驚くべき可能性 第一部:認知症予防の新たな夜明け — 食事戦略への転換

I.A. 認知症パンデミックと予防戦略の緊急性

アルツハイマー病(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)をはじめとする神経変性疾患は、世界的な高齢化の進展に伴い、急速に増加しています 1。これらの疾患は、患者本人だけでなく、家族介護者、そして社会全体に巨大な医療・介護コストと経済的損失をもたらしており、早急で適切な対策が求められています 1

これらの認知症の主要な特徴は、脳内に特定の毒性タンパク質(ADではアミロイドβ(Aβ)やタウ、FTDではタウやTDP-43、DLBではα-シヌクレイン)が蓄積することです 1。重要な点は、これらの病理学的変化が臨床症状が発現する数十年前、前臨床段階から始まっていることです 1。したがって、認知症を根絶するためには、症状が現れる前の段階から、長期間にわたる予防的な介入を開始することが不可欠です。

研究では、長期介入に耐えうる理想的な認知症予防剤には、以下の五つの要件が必要であると定義されています 1

  1. 高い安全性を有すること。
  2. 患者自身が非侵襲的に摂取できること。
  3. 安価であること。
  4. 多様な病因タンパク質(Aβ、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43など)に対して広範な作用(広域スペクトル)を持つこと。
  5. 毒性オリゴマーによって損傷した神経を修復する能力を持つこと。

しかし、これらの要件を単一成分の医薬品で満たすことは困難です 1。医薬品は特定の標的に作用することが多いため、複数の病理が混合する認知症(混合病理)全てに対応する広域スペクトル作用を持つことは難しくなります。さらに、全高齢者を対象とした予防薬を開発・提供すれば、医療経済が崩壊するという現実的な課題も存在します。このような背景から、研究者たちは、高い安全性、安価、そして多成分で構成される「適切な食事」こそが、この複合的な課題に対する最も実行可能かつ持続可能な代替手段であると結論付けました 1

I.B. ハワイの秘草「Mamaki」:科学が注目した伝統の知恵

研究チームがこの「適切な食事」の源として着目したのは、ハワイ原産の在来ハーブであるMamakiです 1。Mamakiの葉は、ハワイで人気のあるハーブティーとして飲用されてきた歴史があり、特にその果実は、血糖値、血圧、コレステロールの調整、ストレスや疲労の緩和、抗炎症作用を持つ伝統的な民間薬として古くから利用されてきました 1

Mamakiの葉には、主要な成分として3種類のポリフェノール、すなわち(+)-カテキン、クロロゲン酸、およびルチンが同定されています 1。これらのポリフェノールは、抗炎症作用や抗酸化作用といった多機能性を持ち、モデルマウスやヒトにおいて神経変性疾患に対する有益な効果を示すことが、過去の研究で示唆されています 1。これらの観察結果は、Mamakiが抗認知症食の一部となる可能性を示唆するものです。本研究では、乾燥させたMamakiの葉と果実から、葉の熱水抽出物、葉の単純破砕粉末、果実の単純破砕粉末の3種類の製剤を作成し、これらがAD、FTD、DLBを含む4つの異なる神経変性認知症のマウスモデルにおいて、認知機能と神経病理にどのような効果をもたらすかを徹底的に検証しました 1