Mamaki、ハワイ原産ハーブ「Mamaki」の驚くべき可能性 第三部:脳の若返りメカニズムと今後の展望
III.A. 脳を修復する能力:BDNFと神経新生の促進
Mamaki果実の破砕粉末が、病理を抱えるマウスの認知機能を健常マウスよりも高めたという事実は、単に病気の進行を食い止めただけでなく、損傷した神経を積極的に修復し、機能を回復させる能力、すなわち「脳の若返り」効果を有することを示唆しています 1。
このメカニズムを検証するため、果実粉末投与後の脳を調べたところ、以下の2つの重要な因子が有意に増加していることが確認されました 1。
- BDNF(脳由来神経栄養因子)発現の増強: BDNFは「脳の栄養因子」とも呼ばれ、神経細胞の生存、成長、シナプスの形成、および機能維持に不可欠なタンパク質です 1。果実粉末は、大脳皮質におけるBDNFレベルを、健常マウスよりもさらに高いレベルまで有意に増加させました 1。
- 神経新生の促進: 新しい神経細胞が生まれるプロセスである神経新生が、学習と記憶に関わる海馬の歯状回(DG)と、運動機能に関わる黒質(SN)の両方で有意に促進されました 1。BrdUとDCXが両方とも陽性となる細胞が新しく生まれた神経細胞です。




これは、従来の認知症予防戦略が病理の蓄積を抑えることに主眼を置いていたのに対し、Mamaki果実粉末が神経機能を能動的に回復させる可能性を示している点で、予防研究における重要なブレークスルーです 1。BDNFの増加と神経新生の促進を通じて、失われた神経ネットワークが再構築され、認知機能が回復していると考えられます。
III.B. ポリフェノールを超えて:「その他の機能性物質」の謎と腸脳相関
Mamakiの強力な効果を担う活性成分を特定するため、主要な3種のポリフェノール(カテキン、クロロゲン酸、ルチン)の各製剤における含有量が分析されました 1。
Table 3: 主要ポリフェノールの含有量と有効性の比較 (100g中の含有量)
| ポリフェノール | 葉の熱水抽出物 (g/100g) | 葉の破砕粉末 (g/100g) | 果実の破砕粉末 (g/100g) | 有効性との相関 |
| カテキン | 0.031 | 0.15 | 0.29 | 含有量の増加傾向が有効性と一致 |
| クロロゲン酸 | 0.44 | 0.72 | 0.12 | 有効性との相関は低い |
| ルチン | 0.83 | 1.3 | 0.41 | 有効性との相関は低い |
含有量の分析結果、3種のポリフェノールの中で、製剤の有効性の序列(葉の熱水抽出物<葉の破砕粉末<果実の破砕粉末)と一致する傾向を示したのは、カテキンのみでした 1。
この主要なポリフェノールの寄与を評価するため、最も効果の高かった果実粉末の投与量に含まれる3種のポリフェノールの混合物を、単独でマウスに投与する実験が行われました。その結果、この3成分混合物による記憶改善効果は不完全であり、単独の果実粉末が示した劇的な効果には遠く及びませんでした 1。
この実験結果は、Mamakiの類まれな神経修復・認知機能向上作用が、これら3つの主要なポリフェノールだけでは説明できず、**果実に特に豊富に含まれる未同定の「その他の機能性物質」**によってもたらされていることを強く示唆しています 1。
研究者たちは、この未同定の機能性物質として、食物繊維の役割を強く仮定しています。Mamakiの葉は他の商業茶と比較して食物繊維が豊富であり、破砕粉末はこれらの成分を水溶性・不溶性に関わらず丸ごと含むことになります 1。食物繊維は腸内環境を整え、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)を介して脳機能に影響を与える腸脳相関が近年注目されています 1。破砕粉末が熱水抽出物よりも優れている決定的な要因は、この食物繊維やその他の不溶性成分が腸内フローラに作用し、間接的に脳に有益な効果をもたらしている可能性が高いと考えられます。
III.C. 実用化への展望と今後の課題
本研究の結果は、Mamakiの非抽出単純破砕粉末、特に果実粉末が、認知症予防食の極めて有望な供給源であることを示しました 1。これは、単に病理の蓄積を抑えるだけでなく、BDNF発現や神経新生を介して神経機能を積極的に回復させる能力を持つためです。
Mamakiはハワイで長い食歴を持ち、日本の緑茶の粉末と同様に、破砕粉末の摂取も比較的安全であると考えられます 1。しかし、認知症予防食として長期的に摂取する際の安全性については、さらに確認が必要です。また、マウスモデルで示された有効性がヒトにも同様に適用されるかどうか、そしてヒトでの真の有効性を評価するためには、厳密なヒト臨床試験が不可欠となります 1。
Mamakiは、AD、FTD、DLBを含む主要な神経変性疾患モデルにおけるAβ、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43といった病理のすべてを軽減する能力を示しました。この広範な作用は、予防戦略において極めて強力な武器となります。今後、Mamakiが主要な運動機能障害を伴うパーキンソン病(PD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の予防にも有効であるかどうかが、さらなる研究課題として挙げられています 1。
Mamakiの葉や果実の単純破砕粉末を日常の食事に取り入れるという食事戦略は、多成分による広域スペクトル防御と、脳の若返りという二重の利点を提供し、世界の高齢化社会における認知症対策の大きな希望となる可能性を秘めています 1。
